社長 それをやっちゃいかんでしょ!その参
会社に真っ先に出社して、元気な声で社員を迎えて、今日の仕事の指示を出し、真っ先に営業に出かけたり、工具を握ったりしてラインに立つ。昼休憩になると「おい、飯にするか!」と、従業員といっしょに飯を食い、彼らと笑顔で話をしている。退社時間になると、従業員を真っ先に帰らせて、社長は遅くまで働いている。従業員の不始末は、真っ先にお客様のところに出向き謝っている。こうして会社は儲かるようになっていき従業員は増えてくる。
儲かる会社になると、大きくなった子供たちのことが気になり、いっしょに働かないかと声をかける。頑張って働いてきた姿を観ている子供たちは、大きくなった会社で働いても良いかなと思い就職する。創業者の家族は、役員にして給与を払えば節税になるからと税理士の方がアドバイスしてくださる。ひとりで1800万円の給与を貰うと40%の所得税を支払うが、妻と子供と三等分にすれば、20%の所得税の支払いで済むので納税額は半額になる。
入社早々から役員として働くので、これまで働いてきた社員は面白くない。妻や子供たちは、社長の家族だからと反抗的な社員には手厳しく接するようになる。できる社員ほど辞めていくようになり、できない社員だけが残り業績は下降していく。赤字になっていくと家族間でもいさかいが絶えなくなり、赤字の原因を誰かのせいにしたくなる。妻は離婚したいと言い、子供たちは親を嫌って転職していき、会社は整理しなければならなくなる。
「売り家と唐様で書く三代目」ということわざは、創業者が努力して築き上げた家業も孫の代になると遊び暮らして使い果たし,ついには家まで売りに出す。しかも「売り家」札はその道楽ぶりを物語ってしゃれた唐様の書体で書いてあるという意味。子供や孫が道楽好きではないが、事業継承に失敗した例として、多くの事例があるので注意してほしい。子供であっても、他の社員と同じように扱い、特別扱いはしない態度が求められる。
社長に求められることは、どこまでも、この社長についていこう、人生をこの社長に賭けてみようと思っていただける言動を心掛けるということ。企業としてのし上がってくるには、社長の魅力は必要不可欠。その魅力を磨き続けていなければ、魅力が色褪せた時に業績は下降する。企業業績は、社長の器に応じている。自分を知りたければ自社の業績を観れば良く、改善点を見つけたければ、好業績の社長の真似をすればよい。
業績は社長の成績簿であり、その責任はすべて社長にある。社長の器以上に業績が伸びることはなく、社長の器以下に業績が下降することもない。いつも現場に足を運び、いつも現場スタッフとともに汗を流して「がんばろう!」と声をかけ続ける社長であれば、そこそこの業績は維持できる。さらに、真っ先に営業に出かけて、真っ先にお客様を開拓するようになれば、社員の信頼も厚くなる。