社長 それをやっちゃいかんでしょ!その壱
創業して、会社が少し儲かるようになると、税理士の方から節税のアドバイスがあり、車や不動産を購入しても構わないという。それも、これまで高根の花だった超高級車や高額不動産でも良いと言ってくださる。3000万円の税前利益が出ていれば、1500万円の納税になるから、1500万円の車を買って経費で落としておくと、750万円の節税になりますというもの。
なに!憧れのベンツ、ベントレーでもいいのか?と聞き返す。嬉しくなって車のカタログをジッと見つめて、これまで頑張ってきた自分を褒めても良いかなと思う。ベンツだぁ!それもSクラスにしよう・・・乗ることなどないと思っていた高級車に乗ると、妻も子供たちも「お父さん、凄いっ!」と喜んでくれる。
1億円の税前利益が出ていれば、5000万円の納税になるから、8000万円のマンションを買って経費で落としておくと、4000万円の節税になりますというもの。嬉しくなって都内の一等地で8000万円のマンションを購入して家族で住む。妻も子供たちも「お父さん、凄いっ!」と喜んでくれる。これまで頑張ってきたものなぁと感慨深いものがある。
高級車や高級マンションを所有するようになると、それだけでは済まなくなり、洋服や家具調度品、飲食店や宿泊施設なども高級になっていくので生活費はうなぎ登りになっていく。気が付くと、何とも贅沢な日々。会社が儲かっている期間は、長く続くものではなく、資金繰りに詰まったときは安く買いたたかれて思惑が外れてしまう。
1500万円の車は300万円で売却し、8000万円のマンションは4000万円でしか売れなかった。それでも、資金が足りずに泣く泣く倒産。気が付けば、会社も車もマンションも失くしていたなんて話はごまんとある。会社経営していれば、資金繰りが一番大切で、現金を持っていることが一番だが、現金で所有するには半分程度納税しなければならない。