原宿ノスタルジー
原宿はオシャレな若者が行き交う街。流行を発信し、流行を創る街。オシャレな人が街を闊歩し、粋な音楽がそこかしこから流れてくる街。そんなイメージのある街。僕には、20代の自分の借金を返すことが出来た街でもある。
多額の借金を抱えて田舎で魚の行商から始めた僕は、下着の販売、実用衣料の販売を始める。仕入れも大阪から京都や神戸になり、名古屋や岐阜になり、最後は東京になった。そこは流行の最先端の街で、ここで仕入れた商品を関西で販売した。
仕入れて販売することから、売れ残りを大量に仕入れて卸販売するようになり、自分のセンスでデザインした洋服を田舎で縫製して、原宿のブティックに卸すようになる。そうして10年が経ち、やっと借金を完済することが出来た街。
今でも、原宿に行くと、当時の思いが募る。どんなに稼いでも返済に追われる日々で苦しい思いを笑顔で隠して営業した通り。当時のアパレルメーカーの人がほっとけないと気持ちよく商品を貸してくれた街。
流行の衣服を身にまとっていても、どこかしら引け目を感じて働いている若者の街。精いっぱい背伸びしてカッコつけている若者の街。いつかお金持ちになって有名になってやると皆で言い合っていた街。
20代でお金を手にすると僕は返済ですぐになくなったが、お金を手にした若者は贅沢に走る。派手な女を原宿界隈で連れ歩き、1年で使い果たして文無しになり、原宿から逃げ出した奴もいっぱいいた。
僕は彼らよりも稼いだが、ドブネズミのように街を這いずり回って営業し、新商品のデザインをして必死になって働いていた。洋服、靴、ベルト、アクセサリーなど新しいトレンドを自分のセンスで創っているのが楽しかった。