管理職がなくなる
優秀な社員だからと管理職にするのは日本企業の特色で、欧米では優秀な社員はその部署で実力を発揮させて昇給する。優秀な社員を管理職にすると、現場では新たに新入社員を入れる必要が発生する。管理職にかかる経費は、その人の人件費だけでなく設備や移動費なども必要になる。
年商100億円、経常利益1億円、平均年収450万円、従業員総数100人の会社で、管理職を新たに置くと、ひとりの管理職の年収600万円、その人が移動などに使う諸経費300万円、現場から抜くので新人スタッフが入ることによる人件費が300万円、合計1200万円が必要になる。
この会社の粗利率が35%だとすると、1200万円を新たに出すのに必要な売り上げは、1200万円÷0.35=3429万円の増収が最低でも必要となる。経営者は、こうした計算をしてから、さて、この1200万円を昇給にまわせば、100人に12万円として、12万円÷16回=7500円の昇給が可能(月給)。
全社員昇給なしにして管理職を一人置くか、管理職を置かずに全社員の月給を7500円アップさせるかどうかと比較検討する。多くの場合、社長は全社員の昇給を選択するが、それは、業績が拡大しない現在、従業員の幸せは昇進よりも昇給で叶えるのが社長の仕事だと思っているからだ。
事業拡大が見込めない場合、優秀な現場社員に役職を就け、管理職だらけで現場業務に就くのが新人ばかりになり業績を落とすより、優秀な社員だからこそ現場で頑張ってもらい昇給によって評価することを選択する。しかし、社長はそうした選択をしても理解されない社員からは嫌われる。
業績が悪化してくると、管理職を撤廃し現場に配置して昇給を確保する。業績に応じて規模を縮小する必要があるが、役職を解かれる管理職には辛いこと。事業部も廃止して一事業部に統合する。それでも業績が回復しないときは、昇給を諦めリストラに踏み切る。それでもダメなら倒産していく。