とある国の出来事
あの人に頼まれたら嫌とは言えない関係は誰にでもある。政治家なら選挙応援してくださる支持団体。当選したのは、こうした支持団体のおかげだと感謝していれば、何かしら便宜を図るだろう。あの公共工事、あの入札、あのイベント…こうした仕事を貰えるから支持し、政治家と企業や団体の持ちつ持たれつの関係が構築される。
こうした関係が長く続くと、政治家とのパイプの太い企業や団体が利益を得て大きくなっていく。お礼の献金もうなぎのぼり。政治家に就職を頼み、交通違反のもみ消しを頼み…庶民でもこうして政治家のお世話になった人が出てくる。こうした人は恩義があるので、必ず投票してくれる。こうした利害関係で政治家にしがらみが生まれる。
言いたいことが言えない、やりたいことができない政治家が増えてきても断れば当選できないと思っている。既得権益にがんじがらめに縛られた政治家にうんざりした庶民は、こうしたことをしないクリーンな政治家を求めるようになる。あるとき、老政治家や政党はノーを突き付けられ落選する。
若くてクリーンな政治家に企業や団体がやってきて、「君たちこそ、我々が望んでいた政治家だ」と言って、食事に誘い、クラブに誘い、徐々に良い人だと思わせる。そして、自分たちの利権を守るために働いてくれる政治家に育てていく。嫌がっていれば、ハニートラップでもってゴシップ記事を流して追い落とす。
人間はおだてられると弱い。男の政治家は、金と女にも弱い。女性の政治家は、学歴詐称や不倫を仕込めば言うなりになる。陳情という形で利権を守ろうとする罠を仕掛ける輩もいる。こうして数年のうちにクリーンな政治家はすっかり老政治家と同じ道を歩むようになる。人類の歴史は、こうしたことの繰り返しである。