停戦交渉は相手国より自国を納得させる方が難しい
1945年8月15日に天皇陛下が玉音放送でポツダム宣言の受諾を国民に伝えた日に至るまで、陸軍は徹底抗戦を主張し、1億層玉砕をスローガンに掲げていた。アメリカ軍が本土上陸もしていないのに降伏などありえないと叫んでいた。
船舶のほとんどを失っていた海軍は、これ以上、戦争を継続することはできないと主張し、双方の意見がぶつかり合い和平交渉などできる状態ではなかった。天皇陛下のご決断がなければ日本は玉砕の道を選んでいた。
それまでに300万人の戦死者を出し、「生きて虜囚の辱を受けず」と戦陣訓に書いているのに降伏など認めるわけにはいかない。天皇陛下は誰かにそそのかされているだけだと、近衛兵が反乱を企てるまでに混乱していた。
ウクライナとロシアの停戦交渉でも、もっとも難しいのは抗戦派を如何に納得させるかにある。戦っている兵士は、仲間が戦死しているだけに徹底抗戦を訴えるだろうし、戦死した家族を持つ人も徹底抗戦を叫ぶかもしれない。
和平交渉を訴える人を暗殺したり、非国民だと非難したりする人も出てくる。そのリスクを冒してでも和平交渉に臨む人は、これ以上の戦死者を出さない、これ以上の破壊をもたらさない、そうした強い決意でいなければ自国民に押しつぶされる。
ゼレンスキー大統領は、そうした立場にいるだろう。悔しさでいっぱいになり、死んでいった自国民や兵士のことを思い、アメリカ大統領に和平交渉を託さなければ生き残れない小国の立場に涙していることだろう。
アメリカの態度に世界は自国防衛力を高める動きが出ている。ウオールストリートジャーナルは、日本は核保有国になるべきだという記事を書いている。軍備増強は、リスクを伴うが大国への不信感がそうさせている。