このサイトはJavaScriptがオンになっていないと正常に表示されません

お母さん

 

僕の母親は18歳の時に僕を産んで現在89歳になる。僕は昭和28年生まれなので母親は戦中派になる。子供の頃は、たいそうなお金持ちの家だったそうだが、最愛の母親を亡くした父親は酒浸りになり肝臓を悪くし、商売も身が入らず貧乏になっていった。

 

若い女性と再婚したが、亡き妻を忘れられず離縁。子供達への学費も送ることができない状態だった。そんな状況で高校生だった母は、高校中退を決意する。そんなときに父に一目惚れされてフラフラっと恋に落ち、僕ができたらしい。

 

妊娠していると知った父は、別れようとしたが、必死の母にすがりつかれてやむなく結婚。二十歳の父は遊び盛りで、できちゃった婚。18歳の母に暴力三昧で僕が初めて知っている父の記憶は母や僕に暴力をふるっている姿だった。

 

仲の悪い夫婦なので家にお金を入れず、僕と母は貧乏のドン底暮らしだった。僕がいるために別れることもできず、相当苦労したと思うが、そうしたことは一切言わない。いつも笑顔を絶やさない母に感謝しかなく、僕は早く働いて仕送りしたいと思っていた。

 

遊び盛りの20代の父は、お酒も大好きなら賭け事も女性も大好き。遊び仲間も多く、夜な夜な酔っ払って帰ってきた。生活費を入れてくれない父を憎むのも当然だが、結婚したくない女性とできちゃった婚をした父もやるせない気持ちだったのだろう。

 

戦後間もない頃の日本で、妊娠した女子高生が一人で生きていけるはずもなく、父にすがるしかなかったのもわかる。母は必死だったし、父は実家の祖父や祖母に叱られている。昔は、親の指示に歯向かうことは親不孝とされた時代。父も相当悩んだことだろう。

 

« »