人生は思うようにはいかないもんだ
僕は幼い頃から貧乏暮らしだったので、とても勉強どころではなかった。幼い頃から夫婦喧嘩が絶えず、家の中は父親の暴力の後で泣きながら父を睨む母をかばっていた。父はそんな家族の目を見て外出して飲み歩いていた。誰もが、こんな人生ではなかったと思っていた。
それでも離婚せずに暮らしていたのは僕がいたから。幼い僕を育てる手立てが若い母にはなかった。内職だけでは子育てはできなかった。そんな家庭で育ったので、僕はお金持ちになって母に楽をさせたいと強く思うようになった。
中学を卒業すれば働いて母を楽にさせようと思っていたが、友達からバカにされたので彼と同じ進学校に進むと決めた。両親にはバイトをしながら稼ぐので許してくださいと言った。僕をバカにした友達も弟を癌で亡くして失望していた。
高校を卒業して働こうと思っていたが、祖父からそれではあまり稼げないが、起業して人を使う立場になればもっとお金を稼げるから、大学に進んで自分を磨きなさいと教えてもらって進学した。勉強すれば金を稼げるというのが僕のモチベーションだった。
しかし、女性でつまずき学校では教えてくれなかった人生のつまずきで多額の借金を背負うことになり、20代は返済で追われた生活を過ごしていた。父親に少しばかりお金を工面して欲しいと頼んだが、腹を切って死ねと言われ勘当された。
30代になりやっと完済したが、必死になって働くことが嫌になり学習塾を始めた。子供たちに学問だけでは世の中で通用しないことを教えていた。足し算を教えれば、それをどう活かすかで君たちの人生は変わると教えた。学問は生きる道具にすぎないのだ。
社会に出れば、学校では教えてくれないことばかり。でも、生きていかねばならない。そこには解答などなく、世間に逆らって生きることを選ぶ方がその人には正解ということもある。回答は人によってまったく逆の事さえある。それが人生というものだと教えてあげた。
当時の学生には、変わった先生だと思えたことだろう。自分でも変わった先生だと思う。知識をわかりやすく教えるのが先生だろうと思うが、僕の人生はそれだけではつまずきの連続だった。知識など自慢しても、それで成功するほど人生は甘くない。