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酒のみに酒を与えず、ばくち打ちに金を与えず

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僕は幼い頃、母親から家は貧乏だからお前には何の財産も残してやれないが、出世する方法を教えてあげると言われた。たくさんのことを母から教えてもらったが、離婚して妻の借財を抱え込んで返済に困り親に相談したとき、父親はお金の援助を断り、小刀を出してきて、これで腹を切って死ねば済むと言われた。

 

例え親子といえども、返済の見込みのないお金を出すわけにはいかない。今のおまえは酒飲みが酒を断つから酒をくれと云い、ばくち打ちがばくちを止めるから金をくれと言っているようなものだ。この人にお金を出しておけば、活き金となって活用してくださり、返済に間違いはないと思えるようになれと言われた。

 

そのときは父親を恨んだだが、突き放されたおかげで返済のためなら何でもやる決心がついた。その後、10年かけて返済を完了したとき、母親から「あんたのお父さんは、あの夜、仏壇の前で泣いていたよ。今からでも家にあるお金を持って行こうかと聞くので、私はそれを止めました。」と聞いた。

 

我が子だからこそ、厳しい選択をしてくれたことに今では感謝している。あの時、返済の手助けをしてくれていたら、僕は甘えん坊で仕事を中途半端にするだけで、チョッとしたことにも感情的になり、反省できない傲慢な男で、誰かをバカにして、自分のやりたいことだけやっていただろう。

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