土下座していただきます
僕は社長として40もの直営教室を持っていた頃があった。当時は、直営事業部があり部長が管理しており、部長の下にブロック長がいて、その下に教室長がいる。本社には、FC事業部、直営事業部、システム事業部、企画制作事業部、総務部、経理部などがあり、僕は総括している立場だが、主に教材の制作に従事していた。
ある日、会計士から直営事業部が多額の赤字を出しているという話を聞き、それまで任していたブロック長以上が出席する直営事業部会議に出席してみると、ほとんどの直営教室が赤字だった。1年ほど、その会議に出席してみたが赤字はいっこうに解消されないので、教室を巡回することにした。行く先々で教室現場スタッフから罵声を浴びた。
このとき、初めて会う教室長や教室スタッフは僕を心から憎んでいた。「あなたは、私に本社で~さんを解雇しろと言ったではないですか!~さんは、今ここにいる彼女ですよ!彼女に土下座して謝ってください」と、初対面の教室長に言われたこともあるし、葬式の額に入れた僕の写真が教室に飾っているところもあった。
僕は彼女に会ったことがないのに、どうしてそんなことを言うのだろうと黙って聞いていると、直営事業部長やブロック長は部下に話すときに「社長の命令だから仕方がない」と言っていることがわかった。部長を信じて、事業部任せの運営ではうまくいかないことを思い知ることとなる。
何の言い訳もしないで黙って土下座している僕は直営を立て直したが、土下座しろと泣き叫んだ教室長は辞めていかれた。「こんな会社やってられない」と怒鳴って、会議の席上で机を蹴り飛ばした事業部長も退職された。現場に行かない社長がどんな目に合うか、5億円もの授業料を支払うことになる。
事業部を細分化して、それぞれに役職を与えることは、長年頑張って仕事をしてきた従業員に報いるということでは効果的でも、彼に管理職が務まるかどうかは別問題で、そうすることで中間管理費が増大し、事業部間に壁が生まれ、末端社員が苦しむ原因となり、収益が圧迫され、昇給幅が圧縮し、良いことはなかった。
それ以後、僕は、中間管理職が如何に頑張っていても、どの社長様にも現場に行って現場の声を直接聞き、現場で必要なものをトップの判断で決済してあげることが如何に重要かを説明している。僕の忠告を聞き、現場に毎日足を運ぶ方の業績は良くなり、聞く耳を持たない方の業績は下降している。