人の上に立つなら腰を低くしなさい
僕は企業経営者として40年以上やってきた。金融機関や格付け企業からの評価は高く、全国でもトップレベルの企業経営者らしい。講演会の依頼も多くあるが、そのほとんどはお断りしている。子供のころから母親に「能ある鷹は爪を隠す」と教えられてきたので、どんなに自慢したくても我慢してきた。
人は誰しも自慢したいもので、自慢すれば相手はその人を素晴らしいですねと言ってくださるが、その人のために何かしてあげることはない。しかし、自分より能力が劣っていたり腰が低かったりすれば、その人のために何かしてあげようと思ってくださる。人の上に立つなら、自慢しないで相手を褒めてあげることだと母はよく言っていた。
学生の頃、ずっとクラス委員長だった僕は数学が得意でいつも学年のトップクラスの成績を収めていたが誰にも言わなかった。むしろ、相手の成績を褒めて、自分はダメだったと話していた。相手が優位に思えるように行動していた。経営者になってもその姿勢は変わらず、従業員を褒めても、自分を褒めたりすることはなかった。
経営者は指示を出して目標とする儲けを示して仕事をさせるのではなく、働く人自身が考えて出した目標に向かって仕事ができるように手配することが大切で、指示だけでは人は動かない。他人を動かす要諦は、その人を尊敬し、その人のために動くことを厭わない言動があってこそ。
自身のことは謙遜し、相手のことは尊敬する。そうした姿勢は相手に好感を与えて尊敬してくださる。しかし、自身のことを自慢し、相手のことを卑下すると、相手に不快感を与えてしまう。自慢や指導に対し、聞いているふりをされると裸の王様になり、自分のことがわからなくなる。誰も真剣に聞いてくれない人となってしまう。
僕はバカでと話している人で本当にバカな人はいない。むしろ、なんだ知らないのか、常識だろうと自慢している人の方がバカな人だなと思うことが多い。僕は部下を褒めても自分を褒めない。上司でも部下のおかげでと話していると好業績だが、上司である自分だけを認めさせようとする人の業績は下がっている。