コメディなのか悲劇なのか
一流企業に勤めて役付のご主人は、かなりの高収入で年収は1000万円を超えている。専業主婦の奥様は、子育ても終わり、趣味のお付き合いが多い。ご主人は、昼食を500円以下、同僚との付き合いは3000円以下と決め、毎月の収入から15万円を貯蓄に回していた。
しかし、奥様がある宗教に入られ、熱心な信者となり、多額の寄付をすれば功徳も大きいと教えられた奥様は、ご主人に内緒で貯金を全額寄付していた。50代になり癌が見つかり入院・手術というときになり、とっさの出費が必要だが、貯金がないことを初めてご主人は知って呆然となる。
怒りがこみあげて妻を怒鳴ってしまうと、妻は多額の寄付をしたのだからあなたの病気は必ず治ると言う。それは医者が決めることだ、バカバカしいと言っても妻は真剣で、泣きながら夫を愛しているから、あなたの病気回復のために全額を寄付したのだと言い張る。
借金をして手術が無事終わり、退院した夫は妻に別れ話を持ち出す。これ以上、自分が知らない間に老後の蓄えを寄付されてはかなわないし、熱心な信者となった妻は、蓄えたお金は、みんなの幸せのためだとすぐに寄付してしまうのでお金が足りないと言うようになる。
あと10年もすれば定年退職になるが、そのとき、まったく貯金がない状態になりかねない。ご主人は、金銭感覚のない妻の恐怖感をぬぐいきれない、今の年収を渡しても、それでもお金が欲しいと言う妻が信じられなくなる。子供たちが、それぞれ巣立って行ったので、老後をいっしょに過ごせないと泣く泣く離婚を決意した。