社長 それをやっちゃいかんでしょ!その壱拾弐
長く働いてくれた社員には、能力に関係なく、その功労をたたえて役職を付けてあげる。できない社員は、役職が付き頑張って働こうとするが、人望がなかったり、能力が劣っていたりで、部下から信頼されなくて業績を落としていく。焦れば感情的になり、嫌味を言ったり、怒鳴ったりで、ますます関係は悪化する。
情に厚い社長は、それでも上司に取り立てた社員をかわいがる。彼の部下が、如何に彼を嫌っていても、就いていけないと社長に相談されても、退職していっても、社長は上司になった彼を守っている。業績はもちろん良くない。能力開発セミナーや管理職研修に行かせて、奮起することを祈っているが、いっこうに良くならない。
役職を貰った社員も努力するが、空回りになり、社長の期待に応えられないために、社長と距離を置くようになる。気まずい雰囲気に管理職同志がなっていけば、部下は就いていけない。業績は改善するどころか、余計に悪化する。お互いの責任のなすり合いが始まり、険悪な雰囲気になっていき、とうとう解雇や退職希望になってしまう。
人材には、それぞれ適材適所があることがわからず、自分にできることは誰にもできると思い込んでいる。できないことをさせるよりも、できることを見極めて、できることを伸ばすように人を使えば、業績は良くなるが、役職を付けることが良いことだと思い込んでいる。思いきって、彼を降格処分にしてあげる方が彼のためにも会社のためにもなる。
役職は、責任職であって功労に報いるための恩賞ではない。責任が果たせなければ降格しないと会社は赤字になる。昇進は誰でもよろこんで発表できるが、降格処分は誰もがやりたくない。恩賞は金銭面で報いてあげるべきで、新入社員であっても実力がある者に役職を付けるべきだ。社長と気まずい雰囲気になる前に社長は反省して、やるべきことをやらねばならない。
人事は会社をダメにもするし、良くもするが、その決定権を持っている社長が、長く働いているからという温情で昇進させれば会社をダメにするし、実力があるからやらしてみようと昇進させれば、期待以上に応えてくれることもある。能力を見極められない温情主義の人事決定者は、その職を降りる方が会社のためになる。