わかるとできる物語 第3章 11 実務に疎ければ仕事はできない
簿記会計の知識やエリア調査のノウハウ、販促計画やスタッフ育成計画、事業計画書の作成スキルや商品知識などビジネススキルがない社会人は、数字で物事を判断できないので感情で物事を判断するようになる。頑張りますと話しても、何を、どこで、いつ、誰と、どのようにして、幾らの資金で頑張るのか説明できない。商品知識もないので、讃嘆したり誇張したりの話が多く商品として他社と比較したことがない。
末端社員が、この会社はおかしくなっていると報告しようとすると、組織は縦割りだから報告内容はそのすぐ上の上司に報告すれば済むことだと幹部社員は指導するが、実務に疎いために現場の状況が正確に分析検証できない。社長である僕に首を覚悟で直営教室の改善報告しようとした当時の吉村ブロック長が社内で苛めにあうことになる。赤字を解消できない担当幹部は、その責任は末端社員にあると勘違いしている。
どうすれば、日本にITスキルを広めることができるのかとワクワクしながら植田専務と毎日話していたが、その思いだけでなく仕事のスキルも伝えなければ東京本社は和歌山に移転するしかない。とりあえず本社スタッフは全員、簿記3級を取るように話し、自社商品であるDVD教材の視聴をするように話した。ビジネスは科学で、キチンとしたやり方があるが、そのスキルがないため感情的になっている社員に実践ビジネスを教える必要があった。
日本の教育制度では最高学府を出てきた人でも仕事のやり方は全く知らない。つまらないゴシップにうつつを抜かす社員を、日本を変えてみせるという理想があり、そのノウハウも兼ね備えた社員にしなければ会社は大きくなれない。仕事とは何か?働くとは何か?仕事の計画とは何か?実行には何が必要か?帳票にはどんなものがあるか?損益計算書の書き方、損益分析の仕方、社員の採用と管理の仕方など初歩から教える必要があった。
彼は親しいからあるいは長く働いているから幹部にするという温情ではなく、その役職をやりこなせるかで人事をするべきだったが、僕は本社に人事権を任せていた。東京本社の人たちで直営やFCの管理はできると思い込んでいた僕は大いに反省して、仕事のできる社員の育成が課題だと思い、実務研修内容を書き「教室運営成功マニュアル」として書籍にし、それをテキストに研修会を開き、実践ビジネス講座を収録し社員の育成に取り組んだ。
実務研修は、DVD教材の視聴による自社商品知識の充実、教室運営のために必要な生徒管理システムの理解、販促計画の立て方、イベントのやり方、効率よい教室運営のノウハウ、新しいOSやOfficeの使い方、タブレットやスマートフォンの使い方、最新のソフトによる画像処理技術の習得、音声編集技術の習得、簿記会計処理の仕方、など多岐にわたる。
経営コンサルタントや企業研修の請負では、マナー講座やチームワーク研修、心を鍛える研修や能力開発研修などという実務とはほど遠い研修が盛ん。実務に疎い社長ほどこうした話が大好きだが、実務に明るいできる社長であれば、自社が抱えている実務研修と実務改善こそ必要だと痛感しているはず。実務に疎い社長ほど出会い系の異業種交流の研修に癒されていくが、それで業績が良くなることはない。