祖国のために死ぬことは名誉なこと
お国のために死ぬことが名誉だと云われ、お国のために死んでいった若者を軍神と祭り、戦時中は村を上げて喜んでくれたものだが、敗戦となると一転して村中がそのことを隠そうとするようになり、軍神一家から距離を置くようになる。祖国のために一命を捧げても、敗戦となれば態度は一変した。
死ぬことがなくても回復の見込みのない外傷や心を病んでしまっても、祖国のために戦ったことは名誉なことだと皆が思うが、祖国に帰ってきても「うちの父ちゃんは戦死したのに、どうしてお前は死ななかったのだ!」と周りから責められる始末。戦争が終われば、名誉の負傷などと讃えられることは表向きとなる。
戦争を望むのはいつの世も政治家で、紛争解決の手段として用いるが、言い出しっぺの政治家がみずから戦場で戦うことはない。軍人は、戦うことを訓練されているが、勇んで戦地に赴いても、前線で敵や味方が死ぬのを目の当たりにすると、大義ではなく生き延びるために必死になって相手を殺すようになる。
戦争は、政治権力の争奪戦にも思える。俺が、聞きわけのないあいつに変わって政治権力を手にいれたいという欲望が戦争を産み出しているようにも思える。政治権力を手中に納めるために、政治家はあらゆる手段を使って戦争を正当化しようとする。いったん戦争が始まれば、紛争国の友達同士が殺し合い、家族は引き離され、商売はできなくなる。