社内にエリートを作らず
ホンダの創業者 本田宗一郎が死ぬ前年、自社を見学した時、ホンダのスポーツカー NSX を開発した方々の写真が飾られているのを観て激怒した。その写真には「選ばれし者たち」と題されており、本田宗一郎は、「君たちの仕事は、食堂のおばちゃんも支えてくださってできたことを忘れている。ホンダには、選ばれし者などいない。みんな平等なんだ!」と叫んだそうだ。
役職に関係なく、誰でも気さくに誰にでも話しかけられる社内の人間関係がなければ、優れた商品は開発できないという信念が本田宗一郎にはあった。平社員は、主任に話をしてからでなければ課長とは話ができない。主任は課長を通じてしか部長と話ができない。平社員が社長と話をするなんて論外という社風を本田宗一郎は極端に嫌った。技術開発の現場で、そんなことを言っていたら世界のトップにはなれない。
僕も、権威主義は大嫌いで、入社早々のパートさんでも「気さくに話をしてください」とこちらから話しかけるようにしている。僕よりも貫禄のある社員がいて、どこに行っても彼達が社長と間違われるが、僕はいっこうに平気。笑顔で彼らにペコペコしてあげ、笑い話に置き換えてしまう。仕事をしている仲間になれば、いつでも、どこでも、何でも相談できる人間関係が楽しさを産み、収益をもたらすことを知っている。
長く働いているのに無役で平社員のベテランがいて、彼らが若手を引っ張り上げて役付にしてサポートしているからこそ企業は強くなれる。無役のベテラン社員が不平等にならないように昇給を確保して、新人が成長できるようサポートしてくれていることを社長としてキチンと評価してあげることはとっても大切。会社は、前に出てくる積極性のある人ばかりの集団でもダメで、いろいろな性格の方がいるからこそ強くなれる。