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おまえは生まれてこなければよかった

 

僕は幼い頃、祖母から「おまえは生まれてこなかったらよかったのになぁ」と言われたことがある、高校生の母親をはらませた二十歳の父の母としての素直な気持ちだったのだろう。祖母は孫には優しいが、僕だけには厳しく竹の物差しでよくぶたれた。

 

幼い頃は何が何だかわからないが、中年になると物事の判断ができるようになる。祖母も悔しい思いをしていたのだろう。親孝行な次男として生まれた僕の父親には、裕福な家庭の子女と見合いをして結ばれ、幸せな結婚を望んでいたのだろう。

 

僕の母親には、「おまえは悪魔だ!」と罵っていたが、その祖母を最後まで世話をして看取っていたのは母だった。どんなに憎まれても愛して世話をする母親には脱帽するしかない。自分への評価を変えるのは自分の努力しかないと割り切っていたのだろう。

 

人は思いもよらぬ他人を傷つける言葉を投げかけるものだ。その言葉を受けると生涯、苦しむようになる。でも、どうしてそんな言葉を投げかけてきたのかと思いをめぐらせば、その人の思いや苦しみを理解して許してあげることもできるようになる。

 

自分だって他人に深く傷つく言葉を投げかけたり、投げようとしたりしたことがあるではないか。それは悲しみや孤独、苦しみや憎しみから生まれた吐き捨てるような言葉だったろう。自分への吐き捨てる言葉を相手に投げてしまった言葉。

 

僕は祖母には近寄らないで生きてきたが、母は祖母に寄り添って生きていた。それがどんなに苦しく厳しいモノかわかるだけに、母親の生き様には驚くばかり。僕は、どのような人にも優しい言葉を選ぶようになった。

 

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