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おまえのような子は、腹を切って死ねばイイ

 

20代の頃、借金返済に窮して父親に懇願したことがある。父親は錆びた小刀を持ってきて、「これで腹でも切って死ね。おまえに貸す金はない。二度と、この敷居は踏むな。」とだけ言って部屋から出ていった。幼いころから反抗的な僕に1円のお金も貸したくなかったのだろう。

 

父親は、「お金に困っている奴にお金を貸しても返ってくることはない。それどころか、催促ばかりするようになり、これ以上貸せないと断ると、これまでの恩も忘れて憎まれる。お金に困っている奴は、自分の力で返すしかない。それができないと思うなら、ここで腹を切って死ね。」と言った。

 

それから10年、30代になった僕は返済を終えたことを母親に告げた。母親は、「あの夜、お父さんは仏壇の前でお金を持って拝んでいた。あいつは死ぬかもしれないと言ったので、死んでもいいからお金は持っていくな。そんなことで死ぬような子を産んではいない。」そうお父さんに話したそうだ。

 

「おまえが魚の行商をしていることも、別れた妻の借財を背負っていることも知っている。必死になって生きていることも知っているし、近所の方から助けてあげてはと言われたこともある。お父さんは、それでも父親かと責められたかもしれない。でも、母さんには黙っていた。だから、黙って見守ることにした。」そう言った。

 

僕は、20代の10年間、必死になって借金返済をしてきたが、両親は必死になって見守っていたのだと思うと、怖いほどの厳しい両親の愛情を感じた。僕には真似ができないが、30代にして初めて父親に感謝の手紙を書いた。壮絶な20代の経験がその後の人生に大きな影響を与えてくれた。

 

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