生きて虜囚の辱めを受けよ
「生きて虜囚の辱めを受けず」は、東條英機が書いた戦陣訓の一節。捕虜となるより死を選ぶのが軍人としての生き方だと説いているが、それまで帝国軍人はこうした意識はなかった。日中戦争での軍の乱れを意識したものだが、これが軍人のみならず、民間人まで浸透したことで多くの犠牲を伴っていった。
軍人は、これ以上戦闘の継続が無理な場合、無駄に死ぬより降伏しても良いことになっている。降伏は恥ずかしいことではなく、無駄な死を回避する当然の行為。軍人ですらそうなのに、民間人なら尚更、これ以上無理だと判断すれば降伏しても恥ずかしいなどと思う必要はない。それは日常生活でも同じ事。
恥をかいても、誰かに非難中傷されても、誰かを傷つけたとしても…それで辱めを受けてもそれは死に値するほどのことではない。反省すべきは反省し、逃げるべきは逃げ出し、抵抗するべき時は抵抗し、生きて生き抜くことこそ大切なことだろう。生きてさえいれば、名誉挽回のチャンスは何度でもめぐってくる。
生きていれば何かしら人を傷つけたり、傷つけられたり、落ち込ませたり、落ち込んだり、恥をかいたり、かかせたりするのもだ。それが生きるというもので、誰も傷つけず、傷つけられず、落ち込まず、落ち込ませずなんて生き方はできない。泣き笑いがあってこその人生だろうと思う。