生き残るのは苦労している方
若い頃の苦労は買ってでもした方が良いと云われるが、そんな苦労はしたくないのが本音。両親が若くして親から勘当された結婚だったために貧乏で、貧乏ゆえに喧嘩の絶えない家で育った。家にいるのが辛い若い父親からは毎日のように暴力を振るわれて生傷が絶えることはなかった。
両親の実家は裕福で、父親の兄弟はそれぞれ独立して会社を経営して成功していた。そんな兄弟から僕たちはバカにされ、母親は虐めにあい、僕は祖母から生まれてこなければよかったのにと幼い頃から言われていた。若い母は内職をしていたが、親戚を周ってお金を借りて生活していた。
幼い頃から畑に捨てている野菜などを拾ってきて食べたり、掃除や地引網などのお手伝いをしたりして手間賃やお魚を頂いて食べていた。小学生になるとアルバイトをして現金収入を得るようになった。それでも飲んだくれの父が生活費を入れてくれないので生活は苦しかった。
大人の人の顔色をうかがうのは当たり前、大人の機嫌を損ねないように振る舞うのは日常のこと、自分の感情を押し殺すのは当然。何をすれば感謝されて現金や食べ物を手にできるのかを考える癖がつく。叔父や叔母さんからもバカにされ、一族の恥さらしだと叔父から言われていた。
どんな大人になるのだろうと母は心配したそうだが、今では立派に生活できるようになった。苛めていた人たちは没落して生活に事欠くありさまなのに、苛められていた僕は不自由なく暮らせるようになった。今思えば、幼い頃から生き延びるのに必死で反抗すらできない環境が僕を成長させたことがわかる。