お金に困っている親族が来れば返済の見込みがなくても貸してあげるのだが、一度や二度なら仕方がないと思うけど、それが3度や4度と続けばどこかで断ろうと貸す方は思い、借りる方はいつまでも借り続けたいと思う。何度目かで返済もしてくれないし、もう貸せないとお断りすると突然、憎まれ口を聞くこともある。

 

「金があるからって人をバカにしてんのか！」感謝されていると思っている方は、驚きを隠せず、「誰に向かって口をきいているんだ！もう二度と金は貸せないから出てってくれ！」となって、カッとなった借りる方は暴力を振るう。それによって死に至る人もいる。何とも悲しい事件が起こる。

 

それなら、最初からお金を借りに来る人は、例え肉親であってもお断りしようと思っていると、「そんな薄情なことがよくできるな！」と親類から責められる。子供やお孫さんから、お金を借りに来て還暦を過ぎた親や祖父母がなけなしのお金を出しても、遊興に使っているだけのことも多々ある。

 

僕の父親は、僕が一番お金で困っているとき、「腹を切って死ねばいい。」と言って小刀を出してくれた。そのときは父親を憎んだが、おかげで誰にもお金を借りようとせず、真正面から返済できないことに向き合う気合が入った。サラリーマンを辞めて魚の行商を始めたのも父親の突き放しがあればこそだ。

 

お金に困っている子供を助けたいと思う気持ちでお金を出す父がいれば、それが仇となって子供を甘やかしてダメにすることもあるだろう。反対に、お金を出さずに生涯、憎まれる父親もいるだろう。僕の場合は、10年経って自立できてから、何も言わないで我慢していた父に感謝できるようになった。

 

誰かが助けてくれるという思いは、甘えとなって自立を阻害することもある。父親にすら突き放されたことで友人知人を頼らず、たったひとりでも必死になって働き、自立しようともがいていたことが自分自身を鍛えてくれて儲けを出せる男に育ててくれた。あの時の父になれるのかと自問してもなかなかできるものではないと父の器の大きさに感謝する。