借金地獄から抜け出す
僕は20代から30代までの10年間を妻が残した多額の借金返済に過ごした。金融機関からは催促の電話や呼びつけなどで息が詰まる思いをしながら行商をしていた。それまで建設会社で設計技師のサラリーマンとして働いていたが、給与だけで返済できる額ではなかったので退職して魚の行商を始めた。
魚の行商を早朝に終えると、今度は自分でデザインした洋服を型紙から生地を切り、自分でミシンを踏んで縫製し、アイロンをかけて包装して近隣の洋品店に行って卸販売をした。行商も卸販売も徐々に遠方まで足を延ばすようになり、気が付くと東京にまで出向くようになっていた。
返済のために必死になって考え、行動していたので、人の話をよく聞くようになったし、周りの人たちの行動を観察するようになれたし、自分がやれないことでも勉強すればと思えば言い訳せずに挑戦できた。矢のような金融機関や業者からの催促に、もがくことで必死になって生きることができたのが良かった。
商品の仕入れ方から販売の仕方、帳簿の付け方、納税の仕方、縫製の仕方、ミシンの操作、営業の仕方、訪問販売の仕方、市場調査の方法、我慢のコツ、人を動かすコツ、自分を高める方法、雇用の法律、経営の仕方・・・大学では習わなかったことを社会人になってから多くの人に教わった。
嘆いているだけなら僕は自滅していただろうが、必死になって学び、行動していたから助かったのだと思う。押しつぶされそうになったとき、ひとりの世界に閉じこもり、何もせずに嘆いているだけになると自分を絞め殺すことになりかねない。外に飛び出し、何かを学び、学んだことを実践してもがいていれば少しはまぎれる。