幼い頃から名声を得るリスク
野球が好きで、幼い頃からやっていても練習だけでは追いつけない持って生まれた才能ある人がいる。まともに練習しなくても才能があれば試合で起用され、活躍して拍手喝さいを浴びる。産まれたときから運動能力は秀でており、皆が尊敬して観てくれる。チヤホヤされることに慣れて豪快な親分肌な人格が形成される。
どんなに才能があっても、いつかは老いてくる。豪快なバッティングもホームランではなく空振りに終わることが多くなる。プロの世界は活躍できなければ使用してくれない。試合中でもベンチで控えていることが多くなり、活躍している頃の親分肌は飲食店で後輩にしか通用しない。チヤホヤされないことにイライラがつのる。
とうとう引退、豪快な金使いで文無しになるが、何かしらの仕事が入ってきて食べるに困らない。ひいきにしてくれる人が仕事を回してくれるが、スポットライトを浴びている頃の自分が忘れられない。贅沢な暮らしや豪快な遊びもやめられない。街を歩くと皆がスターだと声をかけてくれる。
有名人なので、いっしょに飲みましょうと誘ってくださり、ただ酒を飲めるが、それは、誘ってくれた人が自分を連れ歩いていることの引き立て役でしかない。「キャー、…さんじゃないですか!知り合いなのですか?」優しく接してくださるが、見世物のように扱われるのも嫌になってくる。
自暴自棄になり自分を見失う。普通に働いて、普通に安月給をもらい、普通の暮らしができない。そうした普通を知らないし、知ってもチョッと何かをすれば入ってくる収入と比べてしまうのでまじめに普通の職に就いて働けない。「俺は・・・だぞ!」という意識がぬぐえなくドンドン落ちぶれていく。
反対に、子供の頃から貧乏で才能もなく、虐げられ蔑まれて生きていると卑屈になるか生きるために必死になるかしかない。生きようとする欲望が成長の糧になり、才能もなく学力もなくても、周りの空気を読み、笑顔で我慢でき、人を大切にし、人から好かれるようにつとめ、努力でもって中年から伸びてくる人になる。