家庭料理の基本 №15 家庭料理がなくなる
旬の食材を買ってきて、すぐに調理して家族に出す。「お母さん、これ美味しいね!」って言いながら家族みんなで食べる。そんな家庭料理に、スーパーで売られているお惣菜が入ってきて、出汁の素、ミートソースの素、味噌汁の素、インスタント食品、冷凍食品、中国からの輸入食材で作られたお漬物・・・素材からお母さんが調理してくれる家庭料理はほとんどなくなりました。
僕はほとんど外食しませんが、たまに外食しても工場で作られた料理を提供するレストランはおいしくないし、保存料や合成甘味料、着色料などが入った見栄えが良すぎる料理は食べる気がしません。スーパーではこれでもかというほど綺麗で美味しそうな料理が売られています。家庭料理は、今や時代遅れなのかもしれませんが、自分で調理する家庭料理ほど健康的で美味しい料理はありません。
見てくれが良くない、大きさがバラバラでも、旬の食材を買ってきて、すぐに出汁からとって調理した家庭料理は、そんなに凝ったことをしなくても健康的で美味しいです。朝摘みの野菜、朝市で仕入れたお魚は、そのままでも美味しい。和食には、料理に名前がなく、食材に調理方法を書くのが基本。肉じゃが=肉とじゃがいも、ほうれん草のおひたし=ほうれん草をおひたしにする、キンメの煮つけ=金目鯛を煮物にしますなど。
しかし、西洋料理は食材に調理方法とは書きません。カレー、グラタン、パスタ、どんな食材で、どんな調理方法なのかがわからないのが西洋料理。調理の仕方も時間をかけているので、旬の食材を買ってきて、すぐに提供できるものではありません。技術的も高度なものが多いが、和食の基本は食材の形がなくなるほど手を入れません。家庭料理はなおさら、時間も手間もかけませんが、食材は新鮮そのものです。
僕の料理は、家庭料理で昔、母親から教わったものが基本です。そこに自分で工夫したり、プロの料理人のレシピからヒントを得たモノが多くあります。チョッとした一工夫が家庭料理の面白さで、汗をたくさんかいたので、塩味を強くしようとか、寒い日は生姜を擦って入れて身体を温めようとか。休みの日は、産直市場に行って旬の朝どれの食材を買って、1週間分の煮物などを作っていますが、これが僕の楽しみです。
家庭料理は、自分の健康のために手料理を覚えてくださいという願いから書いています。実は、料理の世界は頑固な方が多くいて、その方の調理方法と違えばお叱りを受ける世界です。プロの料理人ですら、自分の調理方法を紹介すると、賛否両論ですので、僕のような仕事人が片手間でやっている調理方法などは真面目な調理人からすれば、切り捨て御免の世界なのかもしれません。
ただ、初めて手料理をしようかと思っている方には、最初からプロの調理方法ではなく、覚えやすくて作りやすいビギナーとして時間がない僕のやり方を最初に覚えていただければ、その後、本当のプロの方の調理方法やこだわりをもっている料理研究家の調理方法を知るきっかけになればと思って書いています。読者の中には不満のある方もいるでしょうが、こんな方法もあるのだと大目に見ていただければありがたいです。