この世の不幸
奥様が病弱で気弱、ご主人は優しいマンション暮らしのご夫婦がいた。ご主人は、いつもそんな奥様のことを気づかって周りの世話をしていた。いつも寝たきりになっていては申し訳ないとそんな奥様が、無理して家事に挑戦してみる。
階段から滑り落ちたり、洗濯物を落としたり、コンロの火を消し忘れたり・・・うまくできない自分に落ち込んでいるが、ご主人は無理しないでといつも笑顔で支えてくれている。そんなご主人が不憫で奥様は自殺する。
結婚に反対していた奥様のご両親は、ご主人が殺したと思い込んでマンションの住人に聞き込みをはじめる。マンションの住人からは、必死になって動こうとしている奥様の姿は痛々しいと書かれているので余計にご主人を責めるようになる。
妻に先立たれ、妻のご両親から責められ、マンションの住人からも白い目で見られるようになり、人々の責め苦に耐えきれなくなり、ご主人もまた奥様と一緒にいようと自らの命を絶ってしまう。
人は観た目や他人の評価を鵜呑みにするが、本当にそれが正しいのか検証しようとはしない。それが、どんなにかその人を追い込んでしまっても知らんぷり。僕が他人の悪口を言う人を嫌うのは、そんな理由から。