成功体験が変化の邪魔をする
50年前、僕はアパレル業界で仕事をしていた。各メーカーの売れ残り在庫を買い付けて各地の洋品店に卸販売する個人事業主だった。当時、憧れのメーカーはレナウン。テレビ番組のCMソングは日本中誰もが口ずさんでいるほど有名だった。
レナウンはいくつかのブランドを立ち上げて全国の百貨店に出店していた。ダーバンなどはアランドロンのCMで紳士服のトップメーカーだった。ひとつのブランドで3億円の売り上げを早期達成するが、それ以上になると難しいので他のブランドを立ち上げる。
それはひとりのデザイナーが個性を発揮できるのが限られているからで、そのデザイナーの個性が失われていくと解雇して新しいデザイナーを雇う。ユニクロがファッション物のデザイナーを雇わないのはそうした理由もある。
レナウンだが、百貨店の売上が減少して閉店する中で、製造から販売戦略まですべての工程の見直しに踏み切れず、従来の百貨店販売に固執して倒産に追い込まれた。企業経営者は、従来の勝ちパターンをそうそう変えられるものではない。
僕は20代でアパレル、30代で学習塾と予備校、40代でパソコン教室と業態を変えながら経営者としてやってきた。そのたびに従業員はその変化についていけずに退職していった。販売員や塾の先生はその仕事が好きなので転職する。
業態の変化はいつも孤独の中で実行するしかなかった。誰もいなくなった店舗やオフィスで残されるのは借金と個人事業主だけ。それでもやり続ける勇気と元気がなければとても業態の転換などできるものではない。大企業ならなおさらだろう。


