積極的敗北
かつての帝国日本陸海軍は、相手の戦力を探ることをせず情報戦にはうとかった。正確な情報収集をせずに戦略を立てるので、撤退することは考慮されず、兵糧だけでなく武器弾薬がつき全滅するまで戦うことを潔しとした。消耗戦にはめっぽう弱い軍隊で、責任は末端の現場の将兵に負わせていた。
ビジネスの世界でも、ライバルの商品やサービス、市場調査や事業計画を立てずに拡大戦略を推し進めるので、撤退することは考慮されず、人員だけでなく資金が底をつくまで頑張ることを潔しとする企業もある。業績悪化の原因を末端の現場の管理職に負わせて自分たちは関係ないと言い切る。
勝利には美酒をいただき、敗北には目をつぶる。そのどちらにも原因と結果があるのだが、原因を探り次に活かすことを忘れた姿勢が倒産に追い込んでいく。積極的拡大をしているときは、威勢の良い話に皆の関心が行きがちだが、そこに大きな落とし穴があることに気が付かない。資金という弾薬が尽きたとき企業は全滅する。
情報ほど価値のあるものはないのに、情報を無視するトップがいて、彼こそが敗北の原因なのに、誰もそのことを言わない。20世紀に拡大した重厚長大型の企業が衰退する中で、21世になりビッグデータを利用したIT企業がドンドン収益を拡大している。ITスキルを身につけた人々が新しいビジネスを起こしている。
大企業のトップが、スマートフォンが使えない、パソコンが使えない、タブレットが使えない、車の運転をしない、ウエブ会議ができない、秘書任せでゴルフや料亭などの接待営業が一番だと思って頑張っている間に、GパンとTシャツを着た髪の毛がボサボサの若者に仕事を奪われている。
彼らは儲けることに興味はあまりなく、こんなことができれば便利だ、こんなになれば高い代金を払う必要がないなど、自分たちが生活しやすいように革命を起こしている。それが楽しくて、面白くてやっているので贅沢や風体には興味がない。彼らがやっていることは世界をひとつにすることにつながっている。