不正に手を染める企業
ニクソンショックで就職難の中、大学を卒業して僕が就職した住宅メーカーは創業間もない会社だった。土地付き1000万円前後、25坪前後の建売住宅は飛ぶように売れた時代だった。社長は施工業者任せで単価を安く抑え、儲けを出すことに感心があっても、快適で安心して住める住宅設計にはあまり関心がなかった。
入社して現場に入ったとき、施工業者が多くの手抜き工事をしていることに気が付いた。それぞれの業者は安い単価でも儲けが出るように手抜き工事をしていた。現場監督は指摘することなく黙っていたので、施工業者に文句を言うと反対に叱られた。このままではお客様を裏切ることになると社長に訴えた。
手抜き工事は多岐にわたり、多くの施工不良は建物を傾かせたり陥没させたり腐らせたりする。会社の信頼に関わることなので即座に止めさせて、キチンとした施工をさせるように訴えた。しかし、社長は、青二才の君が言うことではなく、施工業者に逆らうなと言ったので僕は退職することにした。
企業は売り上げを伸ばすために安く販売できるように努力するが、不正に手を染める事件が後を絶たない。土木建築だけでなく食品加工会社や製造メーカー…多くの企業が消費者を騙して売り上げを伸ばしている。人としての最低限のプライドは、守りたいものだがお金の魔力に憑りつかれる社長は後を絶たない。