ちがうだろ!
秘書に対する言葉使いでヒンシュクを買った政治家の言葉だが、どんなに地位や名誉のある方でも目下の者に対する態度で、人の評価はガラッと変わる。地位や名誉はその方の努力の賜物だが、それは多くの人の支えがあってこそ。それを忘れて、一番近くで支えてくれている人を小ばかにしたような態度をとるのはよくない。
社長さんや先生、政治家や医師など、人々から尊敬される地位にいる人ほど、周りからチヤホヤされるのでこうした態度を取りやすくなる。チヤホヤされることに慣れていくに従ってそれが当たり前になり、そうされないと腹が立ってくる。他人であっても、初対面の人であっても横柄な態度をとってしまう方がいる。
店員や駅員、フロント係に食ってかかっている人を見かけるし、ホテルのエレベーターに乗っているといきなり「君、どうしてドアを開けないんだ!」と見ず知らずの方に怒鳴られたことがある。僕はホテルのボーイとは明らかに違う服装なのだが、相手は機嫌を損なったらしく僕を睨みつけて降りて行った。
物販をしているときは、お買い物をした銀行員のお客様が、現金を床にバラまいて「代金を払ってあげるから拾いなさい!」と言われたこともある。「ありがとうございます」と言って床にバラまかれたお札を拾い上げたが、それが当然でしょという顔を見たときは人間の一番怖い内面を観たようでゾッとした。
長く生きていると、こんなことも我慢しなければいけないのかなということがよくある。僕はグッとこらえて我慢してきたが、それが良かったと思うようになった。感情的になって仕事を失くしたり、信頼を失くしたりしていく人をたくさん見てきた。儲けられるチャンスを自ら逃している人もたくさん見てきた。
たくさん悔しい思いをしてきた僕だが、その悔しさの分だけ幸せを感じる日々を送れるようになった。ちがうだろ!と怒鳴った政治家は、その職を失ったのだから地位や名誉を手にした時こそ、人々への感謝と謙虚さを身につけなければすぐに失脚するのだと知るべきなのだろう。