兵士が死んで平民が生きることを良しとせず
「生きて虜囚の辱めを受けず」第二次世界大戦で東条英機の戦陣訓に書かれた言葉。これは兵士に向かって書いたが、戦争では戦う弾薬や武器がなければ降伏することが良しとされていた。いわゆる無駄死には避け、捕虜となっても解放されればまた戦える。
戦陣訓のために脱走兵はほぼなくなったが、戦死する兵士の消耗が激しくなる。何しろ、捕虜になれないので、武器弾薬がなくとも「バンザイ突撃」で死ぬしかない。熟練兵の死は、補充がきかないので戦いに不慣れで負けることが多くなる。戦陣訓は最初から間違っていた。
負け戦になると、武将は敗戦を認めて腹を切り、部下と民衆を巻き込むことを潔しとせずが戦国時代の武将の潔さだったのに、太平洋戦争では民衆にも同じことをさせようとした。武器弾薬がない民衆に竹槍を持たせて、死ぬまで兵士といっしょに戦えと命令している。これもまた、大きな間違い。
民衆が生きて捕虜になることを拒否して、戦う姿勢を見せるべきだと信じていれば、その民衆に接した敵兵は驚き、殺すしかないと思うだろう。武器を持たない民衆が、白旗を掲げて捕虜になるのは当然のこと。指導者の考えを浸透させることほど恐ろしいものはない。
戦争は、自国の民衆を守るために戦うのであって、民衆を殺すためにするのではない。民衆までもが自殺行為に及ぶような態度で敵に接すれば、全員皆殺しにするまで安心できないと敵は思うようになる。それが原爆投下を正当化してしまう。戦争にはルールがあるが、守られたことがない。