彩りのある人生
昭和30年代まで、街には多くの職人がいて日常使う食器なども製作したり修理して使っていた。タンスなどの家具はもちろん、陶磁器や洋服、小物やふとん、家具や加工食品にいたるまで街の職人が作ったものを大切に使っていた。
戦後、工場で大量生産される安い家具や洋服、雑貨などが出回るようになり職人の収入は減る一方だった。戦後は焼け野原で、ベビーブームも重なり、モノを買い揃えなければならない時代。高くてイイものを買える余裕はなかった。
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2015年になると、戦後生まれの団塊世代の人も70歳未満となり、定年後の生活を楽しむようになった。旅行や趣味に没頭する方も増えてきた。そうなると昔からの職人が作っていた高くてもイイものが欲しくなる。
大量生産された洋服や食器ではなく、職人がこだわって作った洋服や食器、家具や雑貨などが人気となっていく。レストランもチェーン店ではなく、料理人がキチンと調理するお店に行きたくなる。何しろ、健康で動ける残りの人生はあまりない。
平均寿命は日本男性で約80歳、女性は約86歳だが、介護を受けたり病気で寝たきりになったりせず、自立して健康に生活できる健康寿命は男性約70歳、女性約73歳でしかない。つまり、動ける時間はあまりないがお金はある。
残り数年しかないなら、余生を楽しもうとしても何らおかしくはない。こうして、シニア世代は健康でいる間に旅行、スポーツ、飲食、勉学、など若い頃にできなかったことをしっかりやってから介護を受けたいと思うようになる。
これまであまり脚光を浴びることがなかった職人が高い評価を浴びるようになり、若者が職人になりたいと思ってもらえる時代になった。高額商品の消費をけん引しているのは日本のシニア世代と海外の旅行者。優れた商品が海外でも高い評価を浴びているのは嬉しい限り。