このサイトはJavaScriptがオンになっていないと正常に表示されません

お金を貸して!

 

僕の知っている経営者がお金に困っていた。ご近所のおばさんが見るに見かねて数百万円の現金を貸してあげた。必ず返すからとその人は言っていたが返す当てはなかった。返してくれると思っていたおばさんは困って催促する。その経営者は夜逃げして借金を踏み倒した。おばさんのご主人はそれを知って夫婦仲が最悪になった。

 

お金に困っている人は、必ず返すからというのが常だし、それはその時の本音でもあるが、返す当ての目論見は実に甘い。僕もお金で困っているとき、友人がお金を貸してあげようかと言ってくれたが断った。その代わりにお米を10㎏欲しいと言った。つまり、お米は返さないということだ。飯さえ食えれば働いていける。

 

お金を貸すなら返済してくれないと思うことだ。借金の保証人になるなら、自分が返済しなければならないと覚悟することだ。僕の父親は、お金に困っている僕を見て「腹を切って死ねばイイ。おまえは自分で完済できるまで勘当だ。今すぐ、家から出ていきなさい。腹を切るなら、これで切れ。」と言って錆びた古刀を差し出した。

 

それから10年ほど、僕は会社を辞めて魚の行商を始めた。それだけでは足りず、下着の行商、背広の行商と販売商品を増やし、都内のアパレルメーカーの見切り品を借りて販売するようになり、自分で洋服を作って売るようになり、自分のお店を持ち、印刷業を行い、スーパーのチラシをデザインして納品し、やっと完済できた。

 

会社を立ち上げ、儲けることができる経営者になった。30歳を過ぎていた僕は、父親を憎んでいたが、今の自分はあの時の父親の言葉であることに感謝して手紙を書いた。本当の優しさは厳しさにあると感じた。その話を母親にすると、母は笑いながら父親はただ、お金が欲しいからだと言った。ただ、一度言ったのならそれで大丈夫と父に言ったのは母親だった。

 

«