売れているのに倒産する?
仕事があって売れているのに倒産する会社や店舗がある。原因は利益の出ない仕事をしているからで、値上げできない中小企業に多い。これまで、原価70円のものを定価100円で販売している会社や店舗が、原料費の高騰で原価90円になったとしても100円で販売していれば経費を差し引いて赤字になる。
人手に頼る運送業や建設業では、人件費の高騰とガソリンや軽油、資材の高騰などで利益が低くなり、値上げしようにも請負なので、すでに契約で値段が決められており赤字になっても値段の交渉ができないところもある。そうなると、ジリ貧になり余裕のない企業から倒産していく。
農家の方は、肥料や農薬の高騰で、これまでの値段で市場に出せなくなり値上げするが、それだと販売数量が抑えられてしまう。そこで、従来の値段で卸しても販売額そのものは変わらない。肥料や農薬、人件費の高騰分をカバーできずに赤字になり運営できなくなる。
飲食店でも原材料費の高騰で、これまでの利益を確保できないところに人件費の高騰のかさなりで経営を圧迫している。給与を上げようにも利益が出ていないので上げようがない。上がらないので人が集まらない。開店しようにも人出がなく閉店せざるを得ない事態になっているお店もある。
中小企業の経営者は、個人保証もしているので倒産すれば全財産を失うばかりではなく、友人、知人、家族も失うことが多い。その苦しみに耐えかねて自殺する経営者も多くいて、僕の知っている人も数人、そうした孤独のなかで誰にも苦しみを伝えず黙って死んでいった。
僕は、法人会の講演に呼ばれたときは、お金で死ぬことはないと断言している。返せないものは返せないときっぱりと言い、誰から責められても受け流して生きることを選ぶようにアドバイスしている。生きてさえいれば、失敗を活かして復活もありうる。いつかは尽きる命なら焦る必要はない。